更新日:2012.12.12
ビジネスの楽しみ 其の一
メモが繰れない私にとって、九十分を超える毎回の講演資料や各プロジェクトの経営企画で使う膨大なデータは、すべて記憶するしかない。医療関係者用の資料、行政対象のデータ。そしてビジネスデータ。
ただし情報は生きもの。その都度、差し替えては削除し、組み替えては記憶する。
これといった記憶術はない。
しかし、記憶しなければ私の存在価値がないという危機感だけは人一倍だ。首から上だけで大手と提携し、なるほどとうならせるには、正確な情報とターゲットを絞ったマーケティングを明快に提示する必要があるからだ。
「本当によく覚えておられますね」この記憶術をほめられるたびに苦笑し、「首から上しかないんですから、人の二倍くらい活用しないと私の存在価値はありませんよ」と答える。
■ 未活用の潜在能力
それにしても人間には計り知れない潜在能力が未活用のまま眠っていると、つくづく感じ入る。私の記憶力が上がったのは、メモが取れなくなってから。私が迫力あるビジネス英語を覚えたのは、辞書が繰れなくなってから。
ただし、私の記憶力をさらに向上させ交渉術にさらなる磨きがかかったのには、一つの秘訣がある。
朝から晩までそれこそ一日中、脳の中にあるさまざまな引き出しを出しては加工し、加工しては納め、毎日毎日その繰り返し。眠りに入っても尚(なお)、引き出しの出し入れを繰り返している。寝言にまで出ているらしい。
それを妻は、「本当に仕事が好きなのね。朝から晩まで仕事、仕事、仕事。あなたみたいに幸せな男はめったにいないわよ。仕事という名にかこつけて、まるで子供が一日中大好きなパズルをやり続けているみたいよ」と笑う。
(次回に続く)
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