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第二章 コロンブスの卵はアメリカに

春山は、すぐに解決策は食堂テーブルの形にあると気付きました。
食堂にいるお年寄りたちも、車椅子のアームレストやフットレストが
テーブルにつかえたりして身体がテーブルに近寄れず、食べにくそうでした。
介護するヘルパーも、お年寄りの間を次から次へと
動き回らなければならなかったのです。

これを解決したいという、施設側の訴えは十分に理解でき、
問題解決のポイントの見当もつきました。
しかし、春山はその開発にはあえてすぐ着手することはしなかったのです。
確かに、依頼があった特別養護老人ホームなどにはそれなりの需要は見込めるでしょう。
ただ、それが全国的に認められるかどうかとなると確信が持てなかったからでした。

相談を受けてから2年ほどたったころ、アメリカのサンディエゴに介護施設の視察へ。そこで見た慈善団体のナーシングホームでの食事風景が、大きなヒントを与えてくれたのです。

サンディエゴのナーシングホームは粗末な食堂でしたが、そこではなごやかな雰囲気で食事が進められていました。長い板を五角形のペンタゴンに組んで、五辺に車椅子に乗った老人が座り、中央に1人のケアアテンダント(介護職員)が位置して、放射状に食事を楽しむ光景。春山はその何気ないアイデアに妙に感心しました。「なるほど、うまく考えたもんや…」

春山は数年前の自分の食事の光景を思い出していました。当時はまだホルダー付きのコップやホルダー付きのスプーンを使って、辛うじて自分で食事ができたこと。テーブルに肘をつき、その支えさえあれば筋肉の衰えた腕でもある程度手先の自由がかなったこと。「テーブルで肘を支えられるようにしてあのペンタゴン方式にすれば、介護の省力化にも効果があるし、車椅子利用者でも輪になって和気あいあいと食事ができる。デザインは角張ったペンタゴン型ではなく、優しい花びら型のテーブルがいいなあ…」

春山は介護テーブル開発の方向性を決定づけるコロンブスの卵を見つけ、どんどん発想をふくらませていったのです。

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