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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜 



第八章其の一




更新日:2011.8.10.
第八章 「龍二への手紙」 其の一


■ 「一人も二人も一緒よ」

 龍二、君は中学一年生になった。父さんがこの家を建てて移り住んできたのは、君が小学校に上がる年のことだったから、君の学年を数えていればわが家の歴史がすぐに分かる。
お兄ちゃんが生まれたときの話をしたから、次に君のことも話しておこう。

 父さんとお母さんは、お兄ちゃんを生むときにとても思い悩んだ。でも、お母さんの勇気ある決断で、めでたく哲朗が生まれた。正直言って父さんは、春山家に長男が誕生したのだから、子どもは一人で充分だと思っていた。

ところが、哲朗が二歳になったころ、お母さんがこう言いだした。
「ねぇ、もう一人子どもを作ろうよ」

 父さんはびっくりした。だって、お母さんはやんちゃ盛りの哲朗の世話だけでも大変なのに、父さんの面倒も見なくてはならない。そのころの父さんは自分で寝返りも打てなくなり、夜中に何度もお母さんを起こして、体の向きを変えてもらわなければならない状態だった。

 お母さんは、よく冗談でこう言うだろう。
「この家にはデキの悪い長男がいるんよ」と。君も知っているとおり、デキの悪い長男とは父さんのことだ。それほど父さんは、お母さんにとって手のかかる存在なのだ。

 哲朗と父さんの世話で大忙しのお母さんが、もう一人子どもがほしいと言いだすとは夢にも思っていなかった。お母さんにそう言われたとき、父さんは驚きのあまり、ポカンとロを開けたままだった。お母さんはすごい人だと思う。

「もう一人いたって同じよ。大変なのは一緒。でも大変、大変って言っているうちに子どもなんてすぐに大きくなってしまう。一人でも二人でもおんなじよ。それよりも、やがて哲朗が大きくなって、そのとき相談のできる兄弟が一人もいないなんて可哀相やないの。私なんて三人も相談相手がいたのよ」

 父さんだって五人兄弟だった。だから、できることなら子どもはたくさんほしかった。でも、子どもが一人増えて大変になるのはお母さんだ。掃除や洗濯など、家の中のことをして、そのうえ、うちのお母さんは父さんの仕事も手伝っている。しかもお母さんは、お兄ちゃんを生んだとき、帝王切開といって、お腹を切った。とても大変だったのだが、そのお母さんが、それでも、もう一人生みたいと言う。

 今でも大変なのに、本当に大丈夫なんだろうか、と不安に思ったが「一人も二人も一緒よ」というお母さんの言葉に父さんも決心した。


(次回につづく)





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