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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

新しい家族へ

第1話前編
更新日:2009.7.3
第1話「看取る」(前編)

医療・福祉・在宅介護の領域で革新的な事業と提言を続ける ハンディネットワーク インターナショナル(HNI=本社大阪府箕面市)代表取締役・春山満氏による 6回シリーズの連載を始めます。
「目覚めよ!薬局・薬剤師」のメッセージを携え、既成概念にない新たな薬剤師の役割について
考察していきます。

問われる国民皆保険制度の持続可能性や公的年金問題、生活者の社会負担増など先行き
不透明な閉塞感が支配するなか、車椅子のオピニオンリーダーとして時代を先駆けてきた
春山氏から、この難局に生き残るヒントを読み取っていただきたいと編集部では考えております。

「右手にロマン、左手にソロバン」のキャッチフレーズのもと、理想と現実を両立させた
「終(つい)の棲家」ビジネスとは何か? 療養型病床群の解体によって行き場をなくした高齢者の
受け皿を、どのように構築すべきか。「語りおろし」のかたちで進む連載を通じて、その方向性と
薬剤師の使命が見えてくるでしょう。(編集部)


◆絶望の淵でつかんだビジネスの原点◆

26歳で難病の宣告を受けるまで、自分の健康はいつまでも続くと思っていた。やがて走れなくなり、
歩けなくなり、寝返りすら打てなくなった。今では食事も排泄もすべて、他人に助けてもらわなければできない。

しかし、経営とは首から上で決断・説得・行動して責任をとること。「失くしたものを数えるな。
残った機能を120%活性化すれば絶対に生き残れる。多少、身体が不自由なくらいで一番大切な人
の尊厳まで失われてたまるか」と叱咤激励し、絶望の淵から這い上がってきた。

宣告の際、医師が私に与えた唯一の処方せんは「今日できたことを明日も続けるように」と
それだけ。「奪われた機能は戻りません。運動すれば細胞膜の破壊が早まるからリハビリもない。
ただし、寝ていると体力の減退でさらに機能低下」との禅問答を聞かされた時、医療と決別した。

30歳で再び医療機関を訪ねた理由は、女房が「もう一度病院に行こう。あなたはどんどん身体が
悪くなる。私は支えるために工夫が要る。病院は不自由な人々を専門にサービスしているところだから情報が あるはず」と勧める言葉にほだされたから。結果的に期待した情報は得られず、それが
転機となり「医療の世界はおかしい」と確信を持って予感した。

病院経営は、長期入院の高齢者によって成り立っている。1984年(昭和59年)当時の長期入院にはマルメの抑制はなく、 出来高算定で月額70〜80万円の診療報酬が出ていた。1日換算2万5000円もの客室単価で、何年も全館満室のホテルなんてどこにもない。

にもかかわらず関係者は顧客満足の視点などなく、「○○ちゃん」と話しかけ、デイルームで
「夕焼け小焼けの赤とんぼ」を歌い、ボール遊びをさせている。誰が日本の医療と介護の現場を
保育所にしたのか。

この憤りが私のビジネスの原点。女房に「俺は難病になって多くの機能を失くしたけれど、逆に
とんでもないビジネスチャンスをつかんだかもしれない。究極のサービス業を創って日本を
変えたい」と告げ、チャレンジが始まった。そして現在、老いを支える「終(つい)の棲家」という
ライフワークに向かっている。医療と介護そのものの新しいスタンダードを創るために。

(後編につづく)





※このコラムは「DRUG magazin」2009年5月号に掲載された連載を再掲載したものです。





闇に活路あり