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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜 



第四章其の二




更新日:2010.11.17.
第四章 「難病を幸運にする」 其の二


■ 「病気を隠し通す 下」

 「どうした、春山君、大丈夫か。最近どこか調子悪いのとちがう?」
「いやぁ、腰の具合が悪いんですわ。忙しさと運動不足のせいやと思いますけど……」
そう言ってごまかしていたが、娘と結婚しようとしている相手の様子が、会うたびにおかしくなっていくのを心配しないはずはなかった。

 「由子、ボクの病気のこと、お父さんとお母さんには話しておいたほうがいいのとちがうかな。何や騙しているみたいで……」
あるとき、由子に相談したことがある。
私は病気のことを由子と私の家族にしか知らせていなかった。

 ほかの人に知らせても、自分のチャンスが失われるだけで、何のメリットもないと思ったからである。由子の家族には、仕事を成功させ、不自由な身でもビジネスを続けていけるようになってから伝えようと考えていた。
しかし一方で、いつも温かく迎えてくれる彼女の家族に隠し事をし、嘘をついているのが辛くなってきた。

 ところが、そのとき由子はいとも簡単に言い切った。
「そんなん、やめとこ。今言ったら、絶対に結婚を反対されるだけや。いらん心配させるだけや。それより、ミッちゃんの仕事が片づいて、そして結婚してから話せばいい。私はミッちゃんと生きていくと決めたんやから」

 私は由子の言葉に従った。
しかし、聞いてみたことはないが、彼女の家族は私の病気のことを薄々知っていたのではないだろうか。知っていて騙されたふりをしてくれたのかもしれない。

 一方、私の家族は、父も母も治る見込みのない病気と知って、ただため息をつくばかりだった。父は会社が倒産してからというもの、明日のわが身を心配しなければならなくなった。息子が難病と知っても、具体的にしてやれることはなかったのだ。それはわかってはいたが、情けないように私を見る両親の目は、動きにくくなった私の体に冷たく突き刺さるように思えた。

(次回につづく)





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