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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜 



 
第九章其の八




更新日:2012.2.1.
第九章 「苦難に克つということ」 其の八


■ 「自分を笑う」

 それにしても哲朗の冗談は、少々キツすぎたのかもしれない。カウンターの女性が一緒に笑ってくれたのならいいが、逆に彼女を恐縮させ、凍りつかせてしまった。この親子はアブナイと思われたのかもしれない。

 私のような重度の身体障害者は、世間で言う「弱者」である。私は自分のことをけっして弱者だとは思っていないが、カウンターの女性にとって、私のように車椅子に乗っている者は「弱者」である。その弱者をネタにして、小学生からこのような冗談で切り返されるとは想像もしていなかったのだろう。
私は日頃から“福祉のお笑い芸人”を標榜しているが、自分のことを笑い飛ばすと同時に、障害を待った人たちを「弱者」と見ている社会の、凝り固まった固定観念や先入観をも笑い飛ばしている。

 アメリカに仕事で出かけたときのことだった。アメリカの友人が、ある有名なコメディアンのことを話してくれた。コメディアンの名はフレッド・バーンといい、彼は生まれながらにして骨が伸びない病気で、子どもほどの背丈しかない。三〇歳までに八〇回もの手術に耐えてきたという。
現在でも松葉杖をついてステージに立っているが、彼は自分が身体障害者であることを憎んだり、蔑んだり、悲しんだりした姿を一度として友人に見せたことがないという。

「ミスター春山、フレッド・バーンは、身体障害者である自分と他人との違いを、 まるで年の差くらいのこととして、自然に他人に受け入れさせることができる人間なんだ。面白いと思わないか」
友人はそう言って、フレッド・バーンがステージで披露するジョークの一つを私に聞かせてくれた。

「オレのガールフレンドは、どうも浮気をしているような気がする。だって、昨夜、家に帰ってみるとベッドの下にほかの野郎の松葉杖の先ゴムが落ちてたんだ。しかも、シーツには車椅子の車輪の跡がついてたんだぜ」
私と友人は、腹を抱えて笑った。

 このジョークを帰国してから由子に間かせると、彼女は笑いながらも「そんな話、哲朗や龍二には聞かせないでね」と、私に釘をさした。


(次回につづく)





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