第36章 「民は知らしむべからず、由らしむべし。この言葉を忘れたらあかんぞ〜!」
私たち人間は十人十色、千差万別。そもそも、その人にとってフィーリングが合う人、合わない人は絶対に存在する。そして、他人が良いと思った人でも、自分に合わない人もいる。私は強いあこがれを持ち、春山 満の元に飛び込んで行ったが、様々な事が理解できず、消化できず、最初は嫌で嫌で仕方がなかった時期がある。春山 満が部下に接するスタイルは正に羊飼いの様である。迷える部下に対し、まずは「真似ろ」が口癖の春山 満。私はそのとおりに動いてきた。少しも疑問を感じずにと言いたいところだが、実のところは疑問だらけだった。少なくとも春山 満に出会う前に10年以上ものサラリーマン経験を経て、また新たな羊飼いの言うとおりに動けというのは、非常に酷な話である。
"春山 満 語録"の中に「上3年で下を知る。下3日で上を知る。」という言葉がある。部下として働く者は社内で生き抜いていく為に上司の特性を直ぐにつかもうとするが、上司は生き抜く為に必死の部下の本当の姿を見抜く事ができないのである。しかし、私の場合は3日という期間では見抜く事はできず、働く環境と春山 満に対する思いが少しずつ変わり始めたのは数カ月たったころであった。春山 満は部下に責任感を持たせると同時に自らに責任感を課す事が半端ではない事に気がついたのだ。お客様からのクレームがあれば自らが先陣を切り、即自らが動く。部下には何度も会議で大切なことを徹底的に教え込み、プロデュースする施設内のたった一つの備品の置き場所についても何時間もかけ試行錯誤する徹底ぶり。そして何よりもここまで部下を納得させる要因は、言葉に全くブレがない事である。そんな姿を目の当たりにしていると、全てに納得するわけではないが、ある時を境に、意地でも近くにいてやると思ってきたのだ。
こうなると、もう過去の中途半端なビジネスマン特有のプライドは捨て、必死に食らいつくようになった。これだけ真剣だからこそ幾度と反発もし、そしていつも滅多打ちの返り討ちにあったのだ(笑)。見事なまでに木端微塵ですよ。勿論、今でもですが・・・・。こんな事を繰り返していくといつの間にか全てが納得できるようになる。
今思えば、私は師匠「春山 満」の足元にも及ばない全く未熟なビジネスマンだった。今回のテーマは非常に難しい。私は、"春山 満という人間に憧れ"→"崖から突き落とされ"→"また憧れ"→"現在は追い抜きたい"という気持ちでいっぱいである。ただ他の方々が同じ状況になるかといえば、そうではないと思う。今までのコラムで度々言っているが、春山 満が全てではない。私、宮内 修はたまたま春山 満に憧れ、健全な野心と共に追い抜きたいと思えるようになったのだ。だから、それぞれが自らの憧れに対して必死になり真剣に向き合っていかなければいけないと思う。
さて、皆様は、今の日本のリーダーをどう思うか??明確な答えは難しいことでしょう。ではどうするか?私の経験から言うと、まずリーダーにとことんついていく。過去の経験から形成された未熟なプライドは捨て、まず目の前のリーダーに真剣についていく。互いに沢山の情報収集とコミュニケーションをとり、そして時には食ってかかる。それぐらい真剣に接しないと真のリーダーは見極められない。まだまだ苦しい状況が続く日本。真のリーダーを見極める能力を個々が研ぎ澄まし、真剣に考えない限り、救世主となり得る新たなリーダーは出てこないのかもしれない。
宮内 修 プロフィール
アイシーズ株式会社 代表取締役 1973年3月に父 宮内 義彦(現オリックス株式会社 取締役兼代表執行役員・グループCEO)の次男として生まれる。 |
春山 満 プロフィール
株式会社ハンディネットワーク インターナショナル 24歳より進行性筋ジストロフィーを発症。現在首から下の運動機能を全廃。1991年ハンディネットワーク インターナショナル設立。幅広いネットワークと体験を通した独自の視点と着眼で、オリジナル商品の開発や大手医療法人・企業等のコンサルティングなど幅広く活躍。2003年、米国ビジネスウィーク誌にて『アジアの星』25人に選出。 |
ドラ息子企画 編集者 春山 哲朗
編集者 略歴 |