「清く暗く貧しい福祉はいらない、明るくさわやかでお客様をハッピーにさせる究極のサービス業、それが高齢者医療と介護ビジネス」――
こう叫び続けて14年。
私をこのビジネスに駆り立てた決定的なことは、初めて車椅子を作るときの経験でした。

「いよいよ車椅子」ということで、外来で待っていると、
ガラガラと業者がブリキの塊みたいな車椅子を持ってくるんです。
そして「春山さん、これに乗り移ってください」。
女房に支えられ車椅子に乗り移りました。

「手のひらで前にこいでください」と言われると、前にこげました。
「後ろにこいでください」と言われると、少し後ろに動きました。
「ああ、こうやって車椅子は動くのか」と思っていると、「どないですか？」と聞くんです。

「何がですか？」と聞きましたら、
もう一度、私の顔も見ないで書きものをしながら「どないですか？」
「何を聞いているのかな？」と思ったら、「はい、もういいです」。
「何がもういいの？」と、その業者が書いているものをのぞき見ると、
特別仕様の車椅子の寸法表を勝手に書いているんです。
それも、ほんの30秒ほど私に試させただけで終わりです。

（次回につづく）