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春山 満の僕の元気 〜春山 満 コラム集〜

僕がみた世界のGood Time

第六章其の二十九

更新日:2014.5.21
第六章 ヨーロッパの光と影 其の二十九

 
Y テーマパーク型施設の実験

■ いいとこ取りは成り立たない 

 オーストラリアの福祉施設には、学ぶべき点がたくさんあります。けれどその前に、ぼくらが学ばなければならないのは、すべての国民が、やはり日本では考えられないような税金を支払い続けて、この制度ができあがっているということです。たくさん税金を吸い上げて全員を均等に救済するヨーロッパタイプ、自分の命や健康は自分で買うというアメリカタイプ、オーストラリアはその2つを折衷した方策がとられていますが、やはり税金はそれなりに取られているのです。

 だからもし日本がオーストラリアの福祉政策を学ぶとしたら、まず社会資源としての税金がどのように集められ使われているか、その点から学び直す必要があります。オーストラリアでは、医療と高齢者のケアに関して、痴呆のお年寄りをいかに「抑制」しないで暮らさせるかを、非常に深く研究しています。これも学びたいところです。匂いや音や風景など、いわゆる人間の本能を揺さぶるところからケアを考えている。日本とは人間に対する考え方がきわめて違うな、ということを感じます。

 ぼくらは人間というもののケアについて、そこまで深く考えているでしょうか?くり返しになりますが、もしぼくらがオーストラリアのようになりたいのならば、まず税制度を学ばなければなりません。そしてオーストラリアの人口がたった1800万人という現実も考えなければなりません。日本は約1億2700万人です。そして急速に老いていきます。7倍のスケールというのは違います。そしてオーストラリアの国土は日本の22倍です。日本の22倍の国土に日本の7分の1の人口しか住んでいないのです。

 だから単純にオーストラリアのいいとこ取りをするわけにはいきません。ぼくらは日本というスケールを考えながら、日本人の価値観にあったリタイアメントコミュニティ、あるいは本物のナーシングホーム、医療設備というものを、税制度の見直しを含めて自分たちのリスクでつくっていかなければならないのです。
でもその厳しさが、いまの日本にはあるのでしょうか?


(おわり)




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