今回のテーマは「親の背中」。その中で、春山 満は「失くしながら取り戻してきた」という話をしている。テーマとはちょっと異なるがこのことについて書きたいと思う。 春山 満はよく「失くしたものを数えるな」と言っていた。自らが進行性筋ジストロフィーという難病を抱えたことで、そのように言っていたのだろうか?
最近になって、この言葉を言い換えると「何かを得たければ何かを断たねばならない」というように聞こえる。例えばダイエットをするには、ケーキを断たねばならない。健康になるためには、煙草を断たねばならない。資格を得るには、遊びを断たねばならない。
今更ながら何かを得る、決定づける決断をするためには、何かを断たなければならないということ。 当たり前の話だが、実際のところ皆様はできているだろうか? 何かを捨てる覚悟もなく、「自分は貧乏だ、国が悪い、会社が悪い」と愚痴や文句ばかり言っていないだろうか?そんな無駄な時間を過ごさず、何かに取り組むことはできないのだろうか?春山 満もひとりの人間。自分が難病と知ったときには、きっと泣いて愚痴や文句も言いたかったことだろう。でも、ただ泣いて愚痴や文句を言っているだけだったら、ここまでの地位や名誉を残せただろうか?そんなわけはない。
春山 満は愚痴や文句をぐっと呑み込み自らの退路を断って、残された機能を使ってコツコツ努力をしたんだと思う。だから、亡くなった今でも伝説の人なのだ。何かを得たければ、何かを捨てねばならない。もしかしたら、これがたった1つの成功の条件かもしれない。
ここ最近、ラジオのリスナーの皆さんや、取引先の方から「哲朗さんはお父さんの背中を見て育ったんですね。よく似てきましたね」とよく言われる。僕はまだ親の立場になっていないので僕が受けた教育に関しては、どうであったかということは分からないが、自分が育った環境について考えてみると、僕の親はあまりにも多忙な毎日を過ごしていた。世間一般のイメージだが、父はメディアで社員や取引先に対して厳しく接している姿がよく映っていたこともあって、子供にも同様に厳しく勉強も徹底的にさせる親だと思われていたみたいだ。しかし、「勉強をしろ!」と言われた記憶が僕にはない。それだけ子供をかまう時間がなかったからだと思う。
子供の頃に父の姿を意識して見てはいなかったが、無意識に見ていたのだと今になって思う。例えば、働き方一つにしても定時という感覚がまず僕にはない。1つのプロジェクトを成功させる為の時間であれば一般的に言う残業時間、土日祝日を使うのは当たり前だと思っている。これは教えられたというよりも『働くとはこういうことだ』と父の背中から学んだのだろう。今となってはこの感覚を超ラッキーだと思っている。なぜなら、いわゆる一般的な労働時間の常識がなかったため、時間外労働をしても愚痴も出てこないし怒りも感じない。代表者という立場になったからではなく、入社した当初から働かされているという感覚はなかった。まして時間外労働しているという意識もなかった。
こう考えると親になり、家で見せる自分の態度はもの凄く重要だと思う。大人が子供の前で愚痴をこぼしたり、八つ当たりをしたりすると、社会はとんでもない場所だとインプットされていくに違いない。逆を言えば、毎日忙しいけれどイキイキして「社会は厳しいけど面白いぞ」と笑顔で言うと、親のことも社会のことも子供は憧れるはずだ。大人の世界に憧れることができる教育、今まさに必要とされていると思う。
株式会社あすき 代表取締役 会長 1973年3月8日 東京都生まれ。 |
株式会社ハンディネットワーク インターナショナル 春山 満の長男として1985年に生まれる。
高校を卒業後、ハワイの大学へ留学。その後アメリカ ネバダ州のUniversity of Nevada, Las Vegasへ編入。
2007年10月、春山 満からビジネスを学ぶため、株式会社ハンディネットワーク インターナショナルへ入社。
2012年7月、同社 取締役に就任。
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24歳より進行性筋ジストロフィーを発症。首から下の運動機能を全廃。1991年ハンディネットワーク インターナショナル設立。幅広いネットワークと体験を通した独自の視点と着眼で、オリジナル商品の開発や大手医療法人・企業等のコンサルティングなど幅広く活躍。2003年、米国ビジネスウィーク誌にて『アジアの星』25人に選出。 |