「得意淡然、失意泰然」という言葉がある。得意淡然とは、得意なときこそ調子に乗るな!失意泰然とは失意の時にはゆったりとおおらかに!ということ。春山 満から何度も言われ、今でも日々心の中で唱えている。ただ、これがなかなか難しい。人間とは、元来物事を受け入れられない生き物で、都合よく物事を考えてしまうからだ。
時に、得意淡然と失意泰然がごちゃごちゃになってしまうことさえもある。パチンコがいい例だ。玉が出ていると「もっと出る!」と調子にのる。そして・・・結局出なくなって負ける。出ないときは「あと千円で出る!」と妙に前向きになるが、結局負ける。パチンコに興じたことのある方にはおわかりいただけると思うが、これが得意淡然、失意泰然が混ざった状態だと思う。勝っているときに、得意淡然を思い出してすぐやめればいいのだが、そんな時ほど妙に落ち着きまだ出ると思ってしまう。負けているときには「ゆったりとおおらかに!」という意味を取り違えて、黙々と打ち続けてしまう。パチンコのみならず、起業、恋愛、家庭でも、同じようになってしまうことがある。「前向きバカ」と言ったほうがわかりやすいのではないか?
あなたが本当にやらなければならないことは何なのか?
まずそれに集中することだ。今この瞬間、何に集中しないといけないのか?ただそれだけを徹底的にやることだ。そうすればいつか「得意淡然、失意泰然」という言葉が、本当に理解できるのではないだろうか・・・。
撤退の決断は、“モノゴト”を新しく始めることよりも格段に難しい。これは私生活でも仕事でも同じだと思う。特に仕事上で撤退と判断するのはチームリーダーとして最も重要な仕事だ。事業をスタートさせる時には仮説を立て事業計画を作り、ここまでいけばお客様に喜んでもらえ尚且つ損益分岐に到達すると明るい将来を描く。しかし、事業展開する中で見通しが悪くなりリスクだけを抱えるようになれば、誰しも撤退の決断を考えなければいけなくなる。父はよくこんな事を言っていた。「ここで重要なのは撤退と決めたらなりふり構わず逃げて身を隠すんや!そして時期を見て雷の如く打って出ろ」。逃げるというとネガティブな表現に聞こえるが、事業を長年しているとそういう状況もあるという教えだ。
武田信玄もこんな言葉を残している。「風林火山」疾(と)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如し、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し。これは武田信玄が戦の時に孫子の言葉を旗に記したことで有名だ。しかし、孫子が本来残したメッセージは「風林火山陰雷」である。“知りがたきこと陰の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し”と続けている。幾度となく戦略を練ってきた孫子だからこそのメッセージだと思う。時には身を潜めて陰に隠れることも重要。そして次に動き出る時には雷の如く打って出ろという教えだ。
僕も去年会社を引き継ぎ一部の事業を撤退した。我が社の売上の大きなウェイトを締めていた事業である。ただ新しい時代を生き抜いていこうと思えばこの判断は決して間違っていなかったと思う。今だけを見ていては次の道がない。もちろん今がなければ未来もない。右手にロマン、左手にそろばんをしっかり掲げ果敢にチャレンジしていかなければ未来は掴めない。
株式会社あすき 代表取締役 会長 1973年3月8日 東京都生まれ。 |
株式会社ハンディネットワーク インターナショナル 春山 満の長男として1985年に生まれる。
高校を卒業後、ハワイの大学へ留学。その後アメリカ ネバダ州のUniversity of Nevada, Las Vegasへ編入。
2007年10月、春山 満からビジネスを学ぶため、株式会社ハンディネットワーク インターナショナルへ入社。
2012年7月、同社 取締役に就任。
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24歳より進行性筋ジストロフィーを発症。首から下の運動機能を全廃。1991年ハンディネットワーク インターナショナル設立。幅広いネットワークと体験を通した独自の視点と着眼で、オリジナル商品の開発や大手医療法人・企業等のコンサルティングなど幅広く活躍。2003年、米国ビジネスウィーク誌にて『アジアの星』25人に選出。 |