今回のテーマは「人生はちょっと寂しいぐらいがいいのよ」という内容。ラジオの中で、和泉夏子さんが、寂しくてラッキーという話をされているが・・・なんだか、私はとても共感できる。私はたくさんの方々から、「毎日楽しそうでいいですね」とよく言われる。おそらく、いろんなSNSを通じて私の姿をご覧になり、そう言ってくださっていると思うが・・。まあ、私も普通の人間だから、辛いこともたくさんある。しかし、せっかく皆様にご覧いただけるSNSなので、なるべく楽しんでいただけそうな話題を載せるようにしている。たくさんの方々と交流をさせていただけていることには感謝である。ただ、自分で言うのもなんですが、私は結構1人でいることも多いのである。
私はどこにいっても、このコラムを書いているときも、所詮は、「偉い人の息子さん」という視点で見られてしまうのである。今でこそだいぶ免疫はついてきたが、それでも、毎日人と会えば疲れも生じ、1人の時間も必要に感じる。「偉い人の息子さん」と言われるのは構わないが、残念ながら、周りの方々から見れば「偉い人」、つまり私から見れば「最愛の両親」も、いつかは逝ってしまう。そうなれば自分を取り巻く環境はどうなるか?きっと、私のまわりから98パーセントの人はいなくなることだろう。それが当然だと思う。だから、現実的にそんなことを考えると、不必要に人と会いたくないというのが本音なのである。私だって人並みに、寂しいことや悲しいことや不安もある。ならばこそ、現実と向き合い、どのように生き抜くか・・。それしか考えていない。
でも本当にそれがラッキーなこともある。何もかもなくなったら、こんなことをはじめよう、あんな生活をしようと、今では考えられる。春山 満はもしかしたら私にとって一番大切なことを教えてくれたのかも知れない。それが、「人生はちょっと寂しいぐらいがいいのよ」ということである。満たされない部分があるから頑張れる。守りたいものがあるから頑張れる。だから私は寂しくともしっかりと生きる。そう思えるだけで幸せだと思う!
まだ僕は30年しか生きていないので人生はちょっと寂しいぐらいがいいのかは分からない。ただ父はこのメッセージを伝えるとき、不思議な笑みを浮かべていたのを覚えている。父は20代半ばで難病を受け入れ、60歳まで生きた。失くしたものを数えず、残っている機能を120%活かせば絶対生き残れると、必死に生きてきた。こうやってどれほど強い気持ちを持ち続けていても、心の中では寂しいこともあるのだろう。
「一回でいいから息子とキャッチボールをしたかった」
「もう一度この手で女房を抱きしめたい」
生きていれば想像もつかない不遇や不運に巻き込まれることもある。本当はこうしたいと思っても出来ないこともある。それでも自分にしかできないことがあるはずだと、父は自らを奮い立たせて生きてきた。
晩年こんなことも言っていた。
「若い頃は信用もないお金もない中で必死に働いてきた。そして今、多少の蓄えもでき信用も得られるようになった。でも命のタイムリミットが近づいている」
何かを得るためには何かを犠牲にしなければいけないこともある。全てを得ようとするのではなく、人と比べるのでもなく、限られた時間を少し寂しくなることがあったとしても懸命に生きる人生の大切さを教えてくれたメッセージではないだろうか。
株式会社あすき 代表取締役 会長 1973年3月8日 東京都生まれ。 |
株式会社ハンディネットワーク インターナショナル 春山 満の長男として1985年に生まれる。
高校を卒業後、ハワイの大学へ留学。その後アメリカ ネバダ州のUniversity of Nevada, Las Vegasへ編入。
2007年10月、春山 満からビジネスを学ぶため、株式会社ハンディネットワーク インターナショナルへ入社。
2012年7月、同社 取締役に就任。
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24歳より進行性筋ジストロフィーを発症。首から下の運動機能を全廃。1991年ハンディネットワーク インターナショナル設立。幅広いネットワークと体験を通した独自の視点と着眼で、オリジナル商品の開発や大手医療法人・企業等のコンサルティングなど幅広く活躍。2003年、米国ビジネスウィーク誌にて『アジアの星』25人に選出。 |